下流社会

三浦展下流社会』(光文社新書)を読んでない。一ページたりとも読んでいない。
だが、内田樹先生の書評は読んだ(http://blog.tatsuru.com/archives/001341.php)。有名な人の論にのっかって偉そうなことを書くものの、トラックバックは打たない小心ぶりを特色とする、コバンザメ系小市民派ブロガーを自認する私としては、是非ともこの本を論じてみたいところだ。


この『下流社会』という本の何がすばらしいかというと、ネット文化を「下」の文化としてとらえているというに尽きる。

「パソコンというと『デジタルディヴァイド』と言われて、お金のある人は持てるが、お金のない人は持てず、よって所得によってパソコンを使えるかどうかに差がつき、ひいては情報格差がつく、という懸念があった。しかし、今やパソコンは接続料さえ払えば何でも手に入る最も安い娯楽となっており、低階層の男性の最も好むものになっているようである。(・・・)パソコンを所有し、それで楽しむという点では階層差はなく、むしろ趣味がパソコン・インターネットである者は『下』ほど多いというのもまた事実なのである。」(179−180頁)

上の引用は、私が読んでいない本なので、当然孫引きである。これは意外な指摘だったが、いわれてみれば確かにそうだと唸らされる。
どこまで関係あるかはわかりませんが、中国人に囲まれて留学生活をしていたとき、私はやつらのネット大好きっ子ぶりにあきれ果てたことがあります。やつらは私よりもはるかに多くの日本映画をみている。宮崎アニメなんてほぼすべて見ている。ほぼすべてを違法ダウンロードで。
また、やつらはチャット大好きっ子でもある。基本的に中国人は話し好きな人が多く、携帯も意外とよく使うのだが、無料でコミュニケートできるMSNなどではオンライン三昧だ。
彼らは中国には娯楽がないから、ネットぐらいしか楽しみがないんだといっていたが、考えてみると、インターネットはタダの娯楽が溢れる宝の山だ。


貧乏人がネットで暇つぶしをする時代。
そう考えると、

2ch上における中国や韓国への反感・差別意識の強さも、同じ流れにあるといっていいだろう。これらの現象を、若い世代の右傾化と捉える向きも多く、その理由を「勝ち組」・「負け組」に二分された現代日本における、〈在日でもなく、女でもなく、低学歴でもない、でも低所得な人たち〉の鬱憤晴らしだとする考察もある(荷宮和子『声に出して読めないネット掲示板中公新書ラクレ)。

という主張も、的を射ているのかもしれない。ちなみに、この引用も孫引き。
私は最初にこれを読んだとき、「2チャンネルな人が低所得だって証拠は?」と思った。実をいうと、私の持論は「いいセックスをしていな男が2ちゃんねるに書き込む」なので、恋愛弱者というか、人間関係で満足していない人が多いという、香山リカ的な印象を持っていたので、「低所得者の憂さ晴らし」という説には、批判的でした。ですが、『下流社会』はこの説を状況証拠ぐらいにはサポートしているのではないでしょうか。
ただ、『下流社会』の統計は、自己申告に基づいているらしいので、別の調査も必要なのでしょうけれども。